この砂漠で子ども達が取り戻したもの
何もない砂漠地帯の、電気も通っていない場所で24時間、家族で過ごしてみました。パンツも変えずに素泊まりで。
遠くまでずーっと、石がゴロゴロ転がっているだけの、荒れた大地。
視界をさえぎるものは何もありません。
「あの丘の向こう側がどうなっているのか、見て来るね。」と出かけた人の影が、一度米粒くらいの大きさになってから戻ってきて、
「丘の向こうもずっと同じだったよ」と言うような、そんな大地。
この何もない場所で、特に何もせずに24時間を過ごすことで、
家族それぞれに、取り戻したかったことがありました。
何時間もドライブして、この大地に到着した子ども達。
「え?ここでどうやって遊ぶの?」「何もないじゃん!」
あるのは簡易テントと、石ころだけ。
おもちゃもない、公園もない、遊び場もない、エンターテイメントもない。
石しかない。
とりあえず周りをブラブラして、数時間が経ち、
そこからが「無」と向き合う大切な時間でした。
少しするときょうだいゲンカが起き、ふたりの泣く声が聞こえてきました。
6歳と3歳の兄弟。
ケンカの理由を聞いてみると…
「これはぼくの石!」「ダメー!この石が欲しい!」と、
見渡す限り、石しかないこの大地で、
逆に言えば、石なら無限にあるこの大地で、
ひとつの石の、取り合いをしていたと!
もぅ、『世界で一番くだらないケンカ』と名付けさせていただきました(笑)
そんなこんなで、何もないところで質素な夕食をとり、
電気もない、質素なテントの中で一夜が明けました。
子ども達の中に眠っていたものが目覚めた
そして、次の日のこと…
子ども達の姿に変化が現れました。
ふたりは、遊ぶ方法を見つけ出していました。
お気に入りの石を探したり、
石を投げたり、
石を積んだり、
石を並べて道を作ったり、
誰かが大規模に積んでいった、ピラミッドみたいな石の山に登ったり…。
石を使って、何種類もの遊びを考える子ども達。
ずーっと、何時間も遊んでいます。
ふと、
興味深いことに気が付きました。彼らはあまり笑っていないのです。
決して「わ〜い!わ〜い!」と言う感じの、いわゆる元気で楽しそうな子どもの様子ではないのです。それなのに、彼らが深く満足しているということが、親としてよくわかりました。
それは、静かで穏やかで、安らかな感じの満足感でした。
おそらく、彼らにもこの砂漠で、取り戻せたことがあったのでしょう。
子どもに本来備わっている力を取り戻す
普段、たくさんのおもちゃに囲まれ、忙しい生活に追われ、テレビやタブレットに楽しませてもらうことに慣れた、現代っ子の彼ら。
旅行先でも、子どものエンターテイメントがあり、楽しい刺激が、勝手に飛び込んで来る時代。
そんな時代に育っている彼らに、ここで与えらたのは、
何もない空間、石ころ、
たっぷりした時間、家族、
そして、
自分。
それだけ。
自分が何もしなければ、何も起こらないこの大地で、
自分の手を使い、
自分の頭で考え、
自分の感覚を大切にし、
自分でルールを決め、
自分が楽しめることを生み出した!
【自分で自分を楽しくする力】を感じている!
それが、楽しいんだ!それが快感なんだ!
子どもはそういうのが、うれしいんだ!
だから、静かで穏やかで安らかな満足感を感じたのでしょう。
自分で自分を楽しくする力
目で見て、耳で聞いて、肌で感じて、頭で考えて、心で感じて、
与えられた環境を、楽しさに変えていく【自分で自分を楽しくする力】
子どもは本来、誰でもみんなそういう力をちゃんともっています。
彼らはこの大地に放置され、それを少し取り戻すことができました。
別に、砂漠まで行かなくてもいいのです(笑)
子どもを楽しませる刺激を出していないところならば、近場でもいいのです。
世界で一番くだらないケンカをしながら、もがいていく。
自分が何もしなかったら何も起きないその空間を、
「つまんなかった」で終わらせない自分になる。
その過程で得られるものが、お土産です。
なかよしプロジェクトが掲げる、子育ての究極の目標(※1)、
【自分の人生を自分で楽しくする力】とは、例えばこんな力のこと。
子ども達が、持っていてうれしい力なのです。
子ども達よ、もっと自分の力に気づいて生きていって!楽しいよ!
そう、子ども達に伝えていきましょう。
*この記事は、なかよしプロジェクトのFacebookの過去記事を、このブログ用に書き直しています。記事に出てくる砂漠地帯は、イスラエル南部のネゲヴ砂漠です。その後数年間「心のデトックス」と称し、一年に一度、替えのパンツは持たずに一泊しに行き、子ども達のお気に入りの場所となりました!
※1)子ども達へのメッセージ入りの記事です。
子育てのゴールは「自分の人生を自分で楽しくする力」をつけること
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